オープンワールドRPG「原神」の設定をまとめるサイト

ナタのテキスト。
ナタの実装までは、ナタに関する他国のテキストを載せる。

任務

魔神任務第一章第二幕「久遠の体との別れ」
鍾離:水面のように均整の取れた「正義」、炎のように熱く燃える「戦争」、それからかつての氷神の…ふむ、細部まで精巧だ。
魔神任務第四章第五幕「罪人の円舞曲」
ヌヴィレット:私の知る限り、ナタは「龍の国」だ。
(中略)
ヌヴィレット:私のような古龍とは違って、恐らくナタの龍は長い変遷と進化を経て、今やその大勢が人類と共存している。
ヌヴィレット:そこは「戦争」の国でもあり、大地には終わりなき戦火が延々と広がっている。
ヌヴィレット:それからもう一つ、君たちにとって役に立ちそうな情報がある。「召使」との談判で、思いもよらず知ったことだが…
ヌヴィレット:…「隊長」という名のファトゥスが、既にその終わりなき戦争に加わっているとのことだ。
伝説任務・歌仙の章第一幕「無風の地に閉じ込められたら」
ジャック:伝説の燼寂海には風が少しも吹いていなくて、恐ろしかったってところまでです!
スタンレー:そうだ!あそこは耳鳴りがするほど静寂に満ちていてな、目に見える「海」は全て灰燼でできてるんだ。

キャラクターボイス

ウェンティ・「ウェンティを知る・3」
火の神は横暴で戦い好き、岩の神は人の心が分からない頑固者だよ。どうしてこんなことを知っているのかって?エヘヘ、叙事詩の中にはっきりと書いてあるからね。彼らの物語、あの時代の物語が。
ナヒーダ・「ナヒーダ自身について・見識」
烬寂海?あそこには何もないわ。キノシシの脳みそみたいに空っぽ。もちろん知っているわよ。えっ?た…確かに直接見たことがあるわけじゃない…だってあそこも、私には手の届かない場所だもの。

イベント

バージョン2.0期間限定イベント「幻影心流」
渋川:若い頃海外を流浪し武道を研鑽した時に、ナタの者の「拳闘術」を観察したことがある。この流派の武道は練習をするとき、仮想の敵と戦うのじゃ。

渋川:敵の行動を空想し、その空想に対して反応を取る。現地の者に「影拳斗」と呼ばれるこの練習法を、わしは高く評価しておる。
バージョン4.6期間限定イベント「異種サウリアン巡訪戦記」
ランジット:ああ。実は、少し前にナタに行ってきたんだ…
ランジット:あそこは本当に不思議な場所だよ。あの新鮮さを喩えるなら、初めて激辛カレーを食べて、全身に汗をかいた時の感じと言えばいいだろうか。
ランジット:舌がとっくに限界だというのに、手が止まらないんだ…
ランジット:…そうそう、その時にナタで友人をたくさん作ってね。岩登りを教えてくれたり、温泉に連れていってくれたりと、いいやつらばかりだったよ。
ランジット:知ってるか?ナタ人──特にその戦士は、自分らの竜の姿を模した服を身にまとってるんだ。その格好はまるで本物の竜のように逞しくってね!
ランジット:そこで、私もナタの友人の帽子にならって作ってみた。どうだ?悪くないだろ?
(中略)
ランジット:はぁ…私にも竜の仲間がいてくれたら…。だが私はナタ人じゃないし、あの国に長居しても落ち着くことはできない。
-
(爆炎樹とナタの竜って、どこが似てるの?)
ランジット:…ははっ、君は知らないだろうが、ナタには火の玉を吐く竜がいるんだ。炎元素がものすごい勢いで押し寄せるあの感覚は、どことなくナタを彷彿とさせる!
-
(そういえば、まだナタ人を見たことがない…)
ランジット:ああ…ナタの友人が、あの国を離れることについて色々懸念を抱いていたことは確かなようだ。だが、部外者である私があーだこーだ言うのもなんでね。
ランジット:規則だとか禁忌だとか、私にはよく分からないが、一つ言えるのは環境に慣れないからとか、そんな単純な理由ではないと言うことだ、ははっ。
-
ランジット:ああ、今回は行けそうな気がするんだ。なにせ、エンシェントヴィシャップは、テペトル竜[the Tepetlisauri]とかなり似てるからね。
ランジット:私みたいにスメールからナタに行く場合、その道中で初めて会うのがテペトル竜だ。
-
(テペトル竜について…)
ランジット:ああ、あのまん丸い目に、丸っこい腹…テペトル竜は本当にかわいいよ。
ランジット:前にも言ったが、スメールからナタに入る場合、大抵はまずあの子たちに出会うことになるだろう。ナタの東側にある鉱山に生息しているからね。
ランジット:鉱山にはナナツカヤン[Nanatzcayan](こだまの子)という一族も住んでる。採掘に長けた種族で、宝石の価値を見極めるすべを持ってるんだ。
ランジット:退屈そうに聞こえたか?でも全然そうじゃない。あいつらはすごく面白い一族で、特に族長は…
ランジット:ああ、いや…とにかく、もしナタに行く予定があるなら見逃さないようにしてくれ…テペトル竜をね!きっとあの子たちのことを気にいるだろうから。
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ランジット:私がナタにいたとき、こんな物語を聞いた──クントゥルっていうやつが、父の犯した過ちのせいで、太陽に嫌われたという話だ。
ランジット:「太陽に好かれないクントゥル」は部族でも嫌われていて、もちろん仲間になってくれる竜もいなかった。
ランジット:だが彼は落ち込まず、父に対しても、運命に対しても、愚痴ひとつこぼさなかった。そして、努力で証明してみせた。自分は一族の一番強い戦士にも劣らないってことをね。
ランジット:最後に、彼は勇気と知恵を駆使して偉業を成し遂げた。イクトミ竜に仲間として認められただけでなく、一族の英雄にもなったんだ。
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(クントゥルの物語について…)
ランジット:そういえば、友人から聞いたのは物語の後半だけで、前半の部分は聞いてなかったな。彼の父親が太陽に恨まれるようになったのは、一体どんな過ちを犯したからなんだろうか…
ランジット:太陽は、罰として金の矢で彼の父親の目を刺したが、それでも気が済まなかった。クントゥルが足を延ばす先々で、太陽は雲の後ろに姿を隠すようになった。
ランジット:彼の物語が記録された壁画があるらしいけど、まだこの目で見たことはない。
ランジット:ナタの壁画には独特の趣があってな、美しいだけでなくかなり面白いんだ。ナタに行ったとき、鍋じゃなくて、写真機を持ってけばよかったと思ったほどさ。
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(空飛ぶ仲間について…)
ランジット:例のクントゥルの物語にも登場するが、空高く飛ぶ竜というのは、彼の仲間──イクトミ竜のことだ。
ランジット:もし仲間のイクトミ竜の助けがなかったら、彼は成功しなかっただろう。
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(温泉について…)
ランジット:フォンテーヌにも、火傷するほどの熱水泉がいくつかあると聞いた。鉄甲熔炎帝王の住処近くの水域なんかは、煮え立つほど熱いとか…
ランジット:だがナタの温泉は、また違った熱さを持つ。どう説明したらいいか…身体の傷は勿論、心の傷さえも癒えるんだ。
ランジット:それがまた、思いのほかやみつきになるものでね…
-
ランジット:ナタだって、そういう過程を経てるしね。古龍の国から今のように人と竜が互いに信じ合い、仲間になって共に暮らす状態になるまで、どれだけ長い時間を要したか…
(中略)
ランジット:ふむ、スライムは元素生物で、竜も元素生物だ…確かに一理ある。もしかしたら、スライムには竜になれる可能性が秘められてるのかもしれない…

NPC会話

アーディルの会話
うむ、ナタの若者たちはここの者と同じくらい活気に満ち溢れとる…じゃが、彼らには別の意味で「活気」があったのう。
まるで…生まれながらにして戦うための魂を持っているようじゃった。
誤解せんでくれよ。別に野蛮人というわけではないんじゃ!むしろストリートアートやら、競技やら…流行りのものを好んでおった…
あそこは色鮮やかで矛盾に満ちた…魅力的なところじゃった。
藍川丞の会話
ははっ、景色は大げさかもしれないけど…「秋沙銭湯」は、数年前に旅行でナタを訪れ、火山温泉を体験した後に開いた銭湯なのです。
火山温泉の治癒効果は、一度体験すれば一生忘れないでしょう。
オーガスタス・ラヴレスの会話
帰りは、そうですね…試しに砂漠を越えて、ロマリタイムハーバーを通っていこうと考えています。
…ですが、現状まだ経費がたくさん残っています。砂漠を越えて、ナタまで行ってみるのもいいかもしれませんね…
スタンレーの会話
俺は冒険者協会の生きた伝説だぞ!燼寂海に足を踏み入れ、泉の境を越えた男だ!
俺の物語は三日三晩話せるぞ…
(燼寂海?)
いい質問だ!案外話が分かるんだな。あれは俺の伝説の中で一番すごかった出来事だ!
大陸のもう片側に、草が生えない秘境があるんだ。
そこには耳鳴りがするほどの静寂があって、目の前は燼寂海が広がって…
……(話が終わらない)
…あの魔獣が灰燼の海で渦を巻き始めたんだ!巻き込まれた仲間の手を引いた俺は…
……(話が終わらない)
レクトゥールの会話
海に出るのは疲れるけど、ナタにいる最愛のあの子に会いに行くために、俺は今すぐにでも出航したい気分だぜ。
俺は本気だ。すべてが順調なら、転職して、あいつのところに定住したいくらいだ。
でもあの子がいるところには、いくつもの部族があるみたいで…違う部族には違うしきたりがあるみたいだから…ちゃんと溶け込めるのかな…

図鑑

炎願のアゲート
「願いを叶えるために旅立つ、最強になるために戦う…」
「やがて夢の業火に燃え尽きる。」
「その灰燼にまだ初心が残っていれば、■■の真実に辿り着いたという。」
両手剣・話死合い棒
黒曜石の嵌め込まれた重い棍棒。物凄い説得力を持っている。

テノッチ[Tenoch]が燃える野原を眺めると、空の果てから濁った黒い濁流が押し寄せてきた。
そこで彼は青銅のラッパを吹き、ずしりと重い黒曜石の棒を肩に担いだ。

「今まさに危機が近づいているのに、部族の族長たちは言い争いをやめない。」
「テノッチが『話死合い棒』を持って、みんなの仲裁をしよう。」
「テノッチはもうどこの部族にも属さないけど、怒りの炎はまだ燃えているから。」

こうして、孤独なテノッチはずしりと重い黒曜石の棒を肩に担いで、
恐竜が駆け回る野原を、温泉と溶岩だらけの険しい地を通り抜けた。

最初に英雄テノッチを迎えに来たのは、情熱的なワンジル[Wanjiru]とその騒々しい相棒のケウク[Kayeke]だった。
彼女のどす黒い肌には英雄と共に冒険した証拠が残っており、深い傷跡がはっきり見える。
大部族と互いに争って疲れ果てていたが、彼女はテノッチに招かれて再び気力を奮い起こした。
ナタの灼熱の大地のため激戦に身を投じようとしているのに、ワンジルと部族の者に断る理由などあろうものか?

二番目に英雄テノッチと抱擁を交わしたのは、勇猛なメネリク[Menilek]とその忠実な相棒のンゴウボウ[Ngoubou]だった。
「さあ、ゆこう!たとえ諸部族がお前を追放したとしても、たとえ俺たちの仲がいつも悪くとも!」
「メネリクから見れば、棒を持ったテノッチは勇士の中の勇士であり、兄弟の中の兄弟だ。」

三番目に英雄テノッチが訪ねたのは、狡猾なサンハジェ・コンポレ[Sanhaj Kompore]とつかみどころのない相棒のマハンバ[Mahamba]だった。
サンハジェは過去に「話死合い棒」に説得されたことがある。英雄が戦利品を譲ることを承諾して、やっと戦士の隊列に加わった。
コンポレはテノッチと自分の壮絶な結末と、その後「燼寂海」と呼ばれる地がどのように誕生するかを予見した。
「だが構わん、毒蛇のように抜け目なく名声を得た悪党が、英雄を気取る日が来るかもしれん。」

四番目に自ら進んで英雄テノッチに追随したのは、若いブルキナ[Burkina]とその無謀な相棒のコンガマトー[Kongamato]だった。
ブルキナはテノッチとの苦戦を経験したことはないが、雄壮な黒曜石の棒が彼を危険な前途に導いた。
戦いによりテノッチの体に残された無数の傷跡を見て、ブルキナは自分がこのあと通る道を確信した…
変革はそもそも若者の運命である。燃え盛る正義のために血を流すのも、寝台で怠惰に過ごして腐るよりはいい。

五番目に英雄テノッチに説得されたのは、鉱山の長であるスンジャタ[Sundjatta]とその穏やかな相棒のムフル[Muhuru]だった。
「その昔、諸部族の安定のために、争いが再び起きないよう、炎神にお前を追放する投票を求めたことがある。」
「今なお、血みどろの戦いをあきらめないとは…まあよい、これが我々の世代にとって最後の戦いになるかもしれん。」
「お前が自分の考えを曲げないなら、わしも付き合うが、部族の者を巻き込むな。」

六番目に英雄テノッチと同行したのは、若い頃に不倶戴天の敵であった巨人のトゥパク[Tupac]。その巨体を騎乗させられるものはいなかった。
テノッチが大きな棒を持ってトゥパクの住処を訪ねたとき、彼は挑戦者がその身に残した傷跡を細かく数えているところだった。
「傷跡が三百ヶ所以上、骨折が二十ヶ所以上。それに黒曜石の破片が百個ほど皮膚の奥深くに食い込んでいて、宝石をちりばめたようだ。」
「軽傷は二百カ所余り。肋骨が二本砕け、片目はもう遠近が分からない。お前が残してくれた戦利品も同じくらい豪華だ。」

かつての敵同士は大笑いして、それから握手した。こうして、テノッチは六大部族から盟友を集め、
明るく輝く野火のように、黒い山岳と激突した…
聖遺物・烈火を渡る賢者
火渡りの堅実:烈火の中で咲く花、古代の知者はそれをつけて火の海に入ったらしい。
烈火に燃えてから咲く花。
灼熱の痛みでつける者はどんどん強くなる。
火のように赤く染まった花。キラキラ光るメノウのようである。
この火を浴びた花を、火の上を歩く賢者が胸につけた。
火渡りの賢者は最期、人々にこういった。
「これが烈火に燃えてから咲いた花。もし私が灰燼になれなかったら」
「熱い波と黒い煙の中で、必ずこの花は余燼の輝きを放つ」
その後、人々は輝きを追って、マグマの海の淵に辿り着いた。
だが賢者はもういない。残ったのは余燼の中で咲いている花だけであった。
火渡りの苦しみ:光る熱砂が流れる砂時計。砂は流れていき、何の烙印も残さない。
この砂時計の中身は普通の砂ではなく、輝く熱砂である。
時間は熔流のように、何の跡も残さず流れていく。
これは賢者がマグマの海を渡った後の物語である。
伝説によると、彼はまた100年に渡る隠者生活を過ごした。
だがそれは深い苦しみから解放された一時的な時間に過ぎなかった。
賢者は永久の灼熱に耐えられずにこの砂時計を作った。
天を突き上げる火焔の中で、赤い熱砂が行ったり来たり。いつもと変わらない。
可哀想なことに、燃える烈火に耐えた賢者は時間の流れに耐えられなかった。
全ての弟子、家族を遠ざけたこの冷たい炎には、耐える方法がない。
火渡りの解放:火を浴びる孤高な鳥の羽根、炎の中で羽ばたく音が聞こえる。
猛火を浴びた高く鳴く鳥の羽根。火渡りの賢者が手に入れた。
つけると野火に羽ばたく音が聞こえるらしい。
伝説によると、生まれつき孤高な鳥がいるらしい。この鳥は火の中でも歌う。
民衆は鳥を崇拝し、君主は宝として大事に扱った。
火山の地の賢者は鳥の羽根をつけて、烈火に身を隠した。
孤独に生まれた彼は孤独に還って、そのまま行方不明になった。
それ以来、静かなマグマの奥から鳴き声が聞こえる。
あれは猛火を浴びた鳥の鳴き声か、それとも火渡りの賢者の愁吟か?
火渡りの知恵:火の海を渡った賢者の冠、熱い浪の中に立つ古い姿を映したものである。
かつてマグマの海[英語版:the Mare Jivari、中国語版:烬寂海]の流浪賢者が所有していた古い冠。
じっと見てみると烈火からまっすぐ立つ面影が見えるらしい。
流浪する賢者は高温に耐えるように、赤いメノウを使ってこの冠を作った。
知恵と灼熱の執念によって防火の冠ができた。だがこれは同僚と先輩の恐怖と嫉妬を引き寄せた。
「この傲慢な若造、岩漿の怒焔に挑むとは、この100年になかった冒涜だ」
「火の海は必ず彼を呑み尽くす。彼の灰燼も熱い波によって空まで吹き飛ばされ、やがて虚無と化す」
嫉妬深い先生は彼の生徒に嫌がらせのため、冠をかぶって火の海を歩いてもらおうとした。
だが、この冠の持ち主は悠々とマグマの上を歩き、皆の視線から消えた。
火渡りの悟り:流火の高熱を耐えるコップ、何が入っていなくてもその熱さを感じられる。
空っぽの盃にマグマの余熱がまだ残っている。
火渡りの賢者の酒盃。数多くの知恵がこの酒盃から溢れていた。
烈炎を操る賢者に弄ばれても、高温による傷は一つもない。
賢者がマグマを飲み物とするという噂があったが、賢者はそれを戯言としか思わなかった。
美酒は高温によって揮発してなくなるが、知恵は全ての灼熱に耐える。
賢者にとって、美酒は天賦の才の助燃剤に過ぎなかった。
酔っ払った時の火花がインスピレーションを燃やす。
無言の酒盃、知恵が炎から誕生したことを見届けた。
賢者は最後の遠征をする前、盃は孤高に溢れた。
聖遺物・遂げられなかった想い
陰に咲く光の花:灰色の石に彫刻され、巧みに金箔を貼られた花。ある戦争では、敵味方の区別の証として使われていたという。
あれは多くの部族の旗が灰色の埃をかぶり、徐々に色を失っていった時代。
玉座の前に立つ半人は、ひび割れたリングを手に持ち、独裁者の権力を振りかざしていた。
過酷な命令の中、泥まみれの根元からも、かがり火からも、そして深い森に落ちた影からも、
誰も深遠の暮夜の使者や遠くへ去った先祖、最初の神々が残した誡めを聞くことはできなかった。

そして古から訪れた暗闇が、幾千万の闇を飲み込む時が訪れる。
まるで古い巻物に付いた血を拭っても、なお残る鉄の臭いのように。
漆黒の闇が深き地に潜んだ時、赤い瞳の少年は
数多の災難を乗り越え、流れる光のような水の国から禁城の丘へと戻った。

彼が空中の庭に足を踏み入れた時、腰の曲がった盲目の老婦人のかすれ声を聞いた。
「蔓に覆われた沼地にも絢爛な花は咲くもの。」
「探しに行きなさい。ここは巨獣の骨が積み重なる死の地なのだから──」
「寒く残酷な夜に、炎に身を投じる真の正義を貫く人たちを探しに行きなさい。」
「彼らの大望、憎悪、貪欲、野望を裏切らないように。」
「燃え盛る炎を見ようとする彼らの目を裏切らないように。」

最初に到着したのは、輝きを失った羽飾りを手に持つ少女だった。彼女はキヌバネドリのように、各テントを飛び回りながら、少年のために情報を集めてきた。
次にやってきたのは双子の英傑だ。刃物よりも鋭い口と牙を持つ兄と、その背中で暴君の鞭を多く受けてきた弟である。
赤い瞳の少年が竜たちを救ったことを聞き、寡黙な勇士も彼のために力を尽くしたいと思った。

「しかしもう一人、城の構造に詳しい者が必要だ。」
「手の平にあるからくりをいじるように、目に見える道も隠された道にも詳しくなければならない。」
赤い瞳の少年はそう言った。
長い沈黙の後、人と竜の共生を望んできた寡黙な勇士が、ある噂を思い出した。そして、一人の職人の名を口にした。
光褪せた翠尾:輝きの褪せた尾羽の飾り。表面の模様は遥か昔の職人が手掛けたものらしい。
「ターコイズで飾られた彫刻を見た者は、誰もがその巧妙な造形に魅力されるだろう。」
「精緻な金色の碑文を見た者は、誰もが芸術家の卓越した技術に感服するだろう。」

少女は深い絆で結ばれた少年の言葉に従い、噂に聞く職人の姿を探し歩いた。
だが豪華な庭や貴族の宴の中をいくら探しても、収穫はない。
困り果てた彼女は黄金の羽飾りを取り出し、微かな光の下に亡き父の顔を懐かしんだ。
すると、横で顔の半分をフードに隠した酔漢が、羽飾りの紋様の由来を冷たい口調で語り始めた。

荒れ果てた酒場にいる恐ろしい顔をした乞食が、華やかな装飾品の制作者だと誰が思うだろうか。
フードに隠れた顔半分は、焼けただれている。皮膚と肉はどろどろの血に覆われていた。
しばらく驚きで固まりはしたが、少女は恐れることなく、羽飾りを彼に渡した。
光を失った作品を眺めながら、彼はすでにこの場所から失われた
尾の長いカワセミの物語を語り始めた。当時、彼は皆に尊敬されるある人物に頼まれ、これを作ったという…

「その人は私の父で、部族の竜たちを庇ったせいで罪に問われ、命を落とした。」
少女の声は冷たかった。職人はその瞳の奥から、自分と同じ憎しみの炎を見た。

彼女が来意を明かす前に、彼は「ではあなたの…様のために尽くそう」と申し出た。
実際、職人は彼女のために尽くしたいと心の中でそう思ったが、口に出すことはなかった。
何故なら、少女には心に決めた相手がいると分かってしまったからだ。
大業を成す刻:古の国が時間を測るために使った日時計。目盛りの一つには、細かく観察しないと見えない小さな印が残されている。
古代遺物を研究する多くの者を困惑させたものがある。
それは、埃を被った古城の廃墟から掘り出された多くの日時計の上に、
タガネで刻まれた跡が見つかった点だ。それもまったく同じ位置にである。

峡谷から来た者はそれをこう考えた、信仰を失った者が再び黒曜石の柱を灯した時刻だと。
その日、部族の主の代理人である鉱山の娘サックカ[Sakkuk]が、彷徨う魂たちを夜の国へと還した。
吊るされた木の里から来た者たちはそれをこう考えた、契約を捨てた者が再び六族の竜たちと契約を結んだ時刻だと。
その日、戦士たちに信頼された勇士である寡黙な英雄ユパンキ[Yupanqui]は、竜の首に繋がる鎖を剣で断ち切った。
泉の源から来た者はそれをこう考えた、過去を忘れた者が再び波音に耳を傾けた時刻だと。
その日、双子の英雄の兄である饒舌なアタワルパ[Atawallpa]は、過去の栄光に対する人々の渇望に再び火を灯した。
沃土の大陸から来た者はそれをこう考えた、抑圧されてきた人が再び大地の上に立った時刻だと。
その日、双子の英雄の弟であるチャンピオンのワスカル[Waskar]は、先頭に立って漆黒の洪水に相対した。
山頂から来た者はそれをこう考えた、檻に囚われた者が再び自由を取り戻した時刻だと。
その日、赤い瞳の英雄が神の怒りを呼び、侵食された都市を焼き尽くして、部族に平和を取り戻した。

その場にいた謎の煙の地から来た者、秘密を知る若者だけが沈黙し、
一人で純白の巻物に描かれた情景を思い出していた。あれは暗闇が太陽を覆いつくした時だったと言われている。
この時のために準備をしてきた英雄たちは、機を逃さず、玉座にいる理性を失った君王を倒した。
野史の記述によると、計画を立てたのは名前を知られていない職人だったとされている。

「だが職人は、部族の権力を部族に返す戦争で言葉を残さなかった。」
「そしてその後、幾重ものベールに包まれた古い物語の中でひっそりと姿を消した。」

若者は、その多くの日時計に刻まれた同じような痕に触れた。
数えきれないほどの日没前、そして計画の日程が決まった後
──存在しないかもしれない手と、
その手の持ち主がタガネで日時計に痕を刻んだ時刻に思いを馳せながら。
計略の杯:陶器の三足杯。かつては多くの英雄が篝火のそばで杯を掲げ、各々の野望と願いを語った。
彼は赤い瞳を持つ少年と、彼の英雄たちに過去の苦難を語った。
禁城の君主はかつて部族の職人を集め、
旗のような翼を持つ作り物の巨獣を地下から掘り出させて、
自らの野望を持たそうとした。
だが、君王の気まぐれはすでに多くの者に知られていた。そのため、すべての秘密を解き明かした日に
彼は大火を起こした。すべてを燃やそうと、事情を知る者を遺跡と共に、石門の裏に埋めようと…

すべてを焼き尽くす烈火の中、職人は恍惚とした死に際に、石の頭からこぼれ落ちる金色の涙が自分の眼に落ちるのを見て、さまざまな風景をその瞳に映した。
彼は夢うつつの中で巨大な造物を、精巧に動く機械を、流れる炎によって動く影を、そして遥か遠い地平線から天へと昇る月を見たと語った。

「それで、その金の涙が…」「湧き出るインスピレーションの源なの?」
それを作り話として聞いていた双子の英雄は、笑いながら尋ねた。
その口調には信じないというからかいがあった。二人はいつもそうで、男はとっくに慣れていた。
少女の問いかけの視線を受けて、彼はあざけ笑った、顔半分の筋肉が痛くなるほどに。

実際、彼は命を奪いかねない炎の中で、それ以上のものを見ていた。例えば流れる黄金の模様、
遺跡から逃れる道、偉大なる帝国を築き上げるための数多くの鉄則など。
だが最後の一つは少年たちにとって、あまりにも遠いものである…
彼は少ししか酒が残っていない盃を置いた。

おそらく、一切が落ち着き、古い礎石が一新させ、
事がさらに進んだときに、彼は喜んですべてを打ち明けるだろう。
なぜなら、この時の彼の大胆な発想は、新王のために輝かしい帝国の城壁をどう作るかというものだったからだ。
主なき冠:ターコイズとエメラルドで飾られた黄金の宝冠。ベルベットのクッションの上に置かれるのみで、戴冠式に登場したことは一度もない。
かつて彼女の願いに応じて、故国が滅んだ後に輝きを失った羽飾りを再び作り直そうと言う人がいた。
そして彼女は、その尊敬に値する人にターコイズの冠で返すことを約束した。
だが漆黒の魔物が振るった刃の下、あの無残な死体を目にした少女は理解した。
この手で鍛造し、華やかに飾り付けられ冠は、戴冠式に現れない主人を一生待ち続けることになると。

長い年月が経ち、六つの部族の間である噂が広まった。亡くなった鉱山の老婦人が奇妙な趣味を持っていたというものだ。
その老婦人は様々な装飾品、それも煌びやかなものばかり好んで集めていたという。その多くは今の技術では造れないものばかりだそうだ。
中でも、ある職人の名が記されたものであれば、
彼女はどれほどの宝石を支払うことになっても、惜しまず買っていた。
たとえ、それが偽物であっても。

部族の者は、せめて偽物の作り手の欲を満たさないようにしたほうがいいと忠告した。
すると、老婦人はこう答えた。「彼の名声を汚すような偽物を野放しにはできない。」
それに彼女はいつも、偽物を生み出すような卑しい者を一度も見逃さなかった。

勇敢に死に赴いた友人と比べれば、彼女の人生はあまりにも長いものだ。
そこで彼女は残りの時間を、英雄たちが残したものを集めるのに使うことにした。
彼女の愛した赤い瞳の少年は、使命を果たした後に聖火の中へと還り、ほのかな温もりだけを残した。
寡黙な英雄が君王の炎の中に倒れたとき、その目に映った新世界は、彼にとって最高の報いであった。
騒々しかった双子の豪傑は、敵の手にかかる兄弟を目の当たりして、悲しみのあまり声を枯らすまで泣いた。

「結局、アタワルパのほうが先に逝くなんて…一番弱かった私が最後まで生き残るのを、誰が予想しただろうか。」
「波風を経験した者はいずれ平坦な陸地に飽きてしまうと、部族の知者がよく言っていた。確かにその通りだと思う。」
「みんながいないこの時代は、実に退屈だ。」

だが、去っていった友人たちと再会する時はいつか訪れる。
長いことずっと待ち続けていた予感が現実となる時がやってくるのだ。
彼女は数多とある装飾品の中から、職人が作った本物の品をすべて選び取った。偽物と比べて、それはあまりにも数が少ない。
そして彼女は彼の名前が刻まれたものを手に、深い夜の中へと消えると、二度と戻って来なかった。

言い伝えによると、翌日、人々は彼女がターコイズの冠を置いた木の下で、
彼女の遺志に従うと誓った。そして、彼女が持ち去った職人の名を歴史から消したという。

その他

ローディング画面・燼寂海
風が吹くことなく、灰燼で構成された果てのない平野。多くのベテラン冒険者や旅人の夢に終わりを告げた。
原神セレベンツ・プロローグ
ウェンティ:へ〜 剣闘士ね ますますムラタ人らしいや
ヴァネッサ:ムラタ人?
ウェンティ:そう 大陸西部の火山地帯に住む民族のことだよ
ウェンティ:真っ赤な髪に強靭な筋肉を備える、火の神の民。 希少な民族で、北方ではあまりお目に掛かれないんだ。
ヴァネッサ:えっと… 火の神?
ウェンティ:うん それに戦の神でもある ボクも覚えがあるよ 儀式で模擬戦をする前とかに 双方が誓いの言葉を紡ぐんだ 勝利を彼女に捧げるってね
ウェンティ:うん…よくよく考えたら すごいわがままな人だよね
ヴァネッサ:まるで知り合いみたいな言い方ですね…
『テイワット』ストーリーチャプターPV「足跡」
戦いの規律は生きとし生けるものの中に刻まれ、敗者は戦火の灰に、勝者は再び燃え盛る。戦争の神がこの秘密を旅人に教えたのは、相応の理由があるからだ。

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