レムリアのテキスト一覧。
調律師のノート・上
最も重要なことは、語義が混同されて違う考えが生じないように、音律の種類をはっきりと区別することだ…
…世の中には音律は三種類ある。普遍の音律、凡霊の音律、器質の音律である…
…普遍の音律とは本源の音律である。あらゆる音律はこれに始まり、これに終わる。虚偽と真実の星象(すなわち内と外、下と上の星象。ユーレゲティアがこの部分を詳しく説明してくれるだろう)、季節と歳月の往復、定められた元素。宇宙のすべてはこの音律の秩序に従って運行している…
…ここで、普遍の音律とフォルトゥナとの関連に注意してほしい。後者は前者に含まれるが、前者は後者とは異なる。フォルトゥナに近い規格の音律は、それ自体が世界と同等であるため、普遍の音律と呼ばれるのだ…
…カッシオドルがこれまで諸君に教えてきたように、我々が論じている「フォルトゥナ」と至尊はほぼ同じだ…後者は前者を名とし、前者は実際に万物の普遍的な現象を支配する「規則」である。従僕が言うところの「運命」だ…
…凡霊の音律とは俗世の音律である。凡人と神々の音律に違いはなく、みなここに分類される。その本質はいずれも普遍の音律が霊魂の質体を叩く和音だからだ…
…ハープを想像してみたまえ。世の中の実体はどれもこのハープの細い弦に対応している…その雄大な音は単独の弦からではなく、すべての弦の共鳴により出ているのだ…こうした楽曲がすなわち我々のいう普遍の音律である…
…弦の端を弾けば、その中段もそれに伴って振動し、心地よい音を響かせるだろう。弦の中段に直接触れていないのに、音が出せるのは、…に依存しているからだ。
…強調しておかねばならないものは、弦の比喩のように、凡人と神々の音律は奏でられるものだということだ。諸君らも弦の端ではなく、中段を選んで弾けるように。だからこそ、凡霊の音律は普遍の音律に取って代わることができるのだ。この点については後述する…
…器質の音律は最も基礎的な音律であり、くどくど述べる必要はない。従僕でも理解できるだろう…
…続いて、諸君にフォボスの本質と、なぜ無律者を我々と同等の人間と見なしてはならないのかを説明しよう…道徳と理性に基づいて…
…世の中には音律は三種類ある。普遍の音律、凡霊の音律、器質の音律である…
…普遍の音律とは本源の音律である。あらゆる音律はこれに始まり、これに終わる。虚偽と真実の星象(すなわち内と外、下と上の星象。ユーレゲティアがこの部分を詳しく説明してくれるだろう)、季節と歳月の往復、定められた元素。宇宙のすべてはこの音律の秩序に従って運行している…
…ここで、普遍の音律とフォルトゥナとの関連に注意してほしい。後者は前者に含まれるが、前者は後者とは異なる。フォルトゥナに近い規格の音律は、それ自体が世界と同等であるため、普遍の音律と呼ばれるのだ…
…カッシオドルがこれまで諸君に教えてきたように、我々が論じている「フォルトゥナ」と至尊はほぼ同じだ…後者は前者を名とし、前者は実際に万物の普遍的な現象を支配する「規則」である。従僕が言うところの「運命」だ…
…凡霊の音律とは俗世の音律である。凡人と神々の音律に違いはなく、みなここに分類される。その本質はいずれも普遍の音律が霊魂の質体を叩く和音だからだ…
…ハープを想像してみたまえ。世の中の実体はどれもこのハープの細い弦に対応している…その雄大な音は単独の弦からではなく、すべての弦の共鳴により出ているのだ…こうした楽曲がすなわち我々のいう普遍の音律である…
…弦の端を弾けば、その中段もそれに伴って振動し、心地よい音を響かせるだろう。弦の中段に直接触れていないのに、音が出せるのは、…に依存しているからだ。
…強調しておかねばならないものは、弦の比喩のように、凡人と神々の音律は奏でられるものだということだ。諸君らも弦の端ではなく、中段を選んで弾けるように。だからこそ、凡霊の音律は普遍の音律に取って代わることができるのだ。この点については後述する…
…器質の音律は最も基礎的な音律であり、くどくど述べる必要はない。従僕でも理解できるだろう…
…続いて、諸君にフォボスの本質と、なぜ無律者を我々と同等の人間と見なしてはならないのかを説明しよう…道徳と理性に基づいて…
調律師のノート・下
…かつてアウレリウスは事象を四つに分類した。すなわち実体、徴体、質体と結合体である。諸君も知っての通り、その中でも最も重要なのは質体で、一般に「四質」とも呼ばれる記憶、願い、霊魂、人格である…
…己に精通するとは、自身の音律を奏で、実体と霊体を完全に理解し、さらに自分の意志を徹底的に制御し、凡霊の音律を普遍の音律のように奏でることである…
…しかし、凡人と神々の音律はもろい運命にある…張りつめた細い弦が、たとえ自分の身を切っても、管楽器に勝る大きな音を奏でられはしないように…従って、従僕に命じて声楽を演奏するときに、道徳を損なう曲を演奏しないよう楽器の割合を調整しなければならないのと同じように、凡人の音律を統合して配置してこそ、フォルトゥナに対抗するに足る楽章を編み出すことができる。これが我々の言う「フォボス」だ…
…フォボスを奏でなければ、すべてがたちどころに瓦解してしまうと想像されるだろう…凡人と神々はフォルトゥナに征服され、夢なき夢に沈む運命にある…自分の音の軌道をどんなに変えても、最終的には予定の音符に到着する。諸君は楽師として、最後の音節が変わらなければ、音律自体も…自分で自分の楽章を書けないことを知っておくべきだ。これは死よりも恐ろしい結末である…
…言い換えれば、凡人にとって、フォボス離れは裏切りを意味する…彼らの音律が高らかであればあるほど、彼らの願いが確固たるものであればあるほど、フォルトゥナの秩序も強固になり…誰も抜け出せなくなる…
…従って、彼らを我々と同じ人間と見なすべきではない。彼らの選択は自分の意思ではなく、フォルトゥナの軌道に乗っているだけ…彼らに決断の自由はなく、すでに書かれた休止符に向かって奏でるだけ…
…道徳と理性に基づいて、我々ができる唯一の選択は土地と水源からそれらを取り除くことだ。ちょうど疫病を撲滅し、野火を消し止めるように…さもなくば、フォルトゥナの楽章は耳をつんざくばかりにますます大きくなるだろう。それ以外の可能性はなく、もはや反逆の可能性もなくなるまで…
……
…己に精通するとは、自身の音律を奏で、実体と霊体を完全に理解し、さらに自分の意志を徹底的に制御し、凡霊の音律を普遍の音律のように奏でることである…
…しかし、凡人と神々の音律はもろい運命にある…張りつめた細い弦が、たとえ自分の身を切っても、管楽器に勝る大きな音を奏でられはしないように…従って、従僕に命じて声楽を演奏するときに、道徳を損なう曲を演奏しないよう楽器の割合を調整しなければならないのと同じように、凡人の音律を統合して配置してこそ、フォルトゥナに対抗するに足る楽章を編み出すことができる。これが我々の言う「フォボス」だ…
…フォボスを奏でなければ、すべてがたちどころに瓦解してしまうと想像されるだろう…凡人と神々はフォルトゥナに征服され、夢なき夢に沈む運命にある…自分の音の軌道をどんなに変えても、最終的には予定の音符に到着する。諸君は楽師として、最後の音節が変わらなければ、音律自体も…自分で自分の楽章を書けないことを知っておくべきだ。これは死よりも恐ろしい結末である…
…言い換えれば、凡人にとって、フォボス離れは裏切りを意味する…彼らの音律が高らかであればあるほど、彼らの願いが確固たるものであればあるほど、フォルトゥナの秩序も強固になり…誰も抜け出せなくなる…
…従って、彼らを我々と同じ人間と見なすべきではない。彼らの選択は自分の意思ではなく、フォルトゥナの軌道に乗っているだけ…彼らに決断の自由はなく、すでに書かれた休止符に向かって奏でるだけ…
…道徳と理性に基づいて、我々ができる唯一の選択は土地と水源からそれらを取り除くことだ。ちょうど疫病を撲滅し、野火を消し止めるように…さもなくば、フォルトゥナの楽章は耳をつんざくばかりにますます大きくなるだろう。それ以外の可能性はなく、もはや反逆の可能性もなくなるまで…
……
…この方法により、質体を完全に理解し、その実体に形を与えることができる…
…レムスの昔の権能と同様に、(…)をはがし、(…)の中に置く…そうすれば、彼らが完全に沈む前に、再び完璧な諧律の楽章を、人間だけの楽章を構築できるかもしれない…もはや神は必要なく、人間だけが人間の支配者になれる。
…実体と徴体は重要ではない。質体こそが物事の本質を決める鍵だ…楽章を奏でるのは、弦でも剣でも、なんなら(…)でもいい。意味を与えられたものであれば、何でもいいのだ…
…(…)の骨でこの剣を鋳造したのは、高貴なユーレゲティアを記念するためだ…彼女の音律がフォボスの崩壊で果てしない雑音に陥っていなければ、私たちは一緒に…
…一時の狂気のせいで、彼は我々全員を裏切った…偽りの神の意志は浮き草のようなもので、人間には及ばない…でもそれはどうでもいい、最終的に助かるのは人間だけだ。ただ必要なのは…
(この後の文章は乱暴に消されていて、読めない。)
…レムスの昔の権能と同様に、(…)をはがし、(…)の中に置く…そうすれば、彼らが完全に沈む前に、再び完璧な諧律の楽章を、人間だけの楽章を構築できるかもしれない…もはや神は必要なく、人間だけが人間の支配者になれる。
…実体と徴体は重要ではない。質体こそが物事の本質を決める鍵だ…楽章を奏でるのは、弦でも剣でも、なんなら(…)でもいい。意味を与えられたものであれば、何でもいいのだ…
…(…)の骨でこの剣を鋳造したのは、高貴なユーレゲティアを記念するためだ…彼女の音律がフォボスの崩壊で果てしない雑音に陥っていなければ、私たちは一緒に…
…一時の狂気のせいで、彼は我々全員を裏切った…偽りの神の意志は浮き草のようなもので、人間には及ばない…でもそれはどうでもいい、最終的に助かるのは人間だけだ。ただ必要なのは…
(この後の文章は乱暴に消されていて、読めない。)
ルッジェロのノート・1
……
黄金ハンターのレムリアに対する理解は私の予想をはるかに超えていた。
史書の記録によると、ファントムハンターが最初に活動を始めたのは、レムリアが滅びてから数十年後、純水騎士の概念がフォンテーヌから完全に消滅した時だったはずだ。どれだけ脚色しようと、ファントムハンターやレムリア、純水騎士を一緒にすることはない──これらはもともと同じ時代の概念ではないからだ。五歳の子供でも間違えるはずがない…
ところが彼が論じている内容に黄金の劇団に関係するものはほとんどなく、「いつも」もっとも古いレムリアに関することばかりなのだ…
ひとつ推測があるが、彼に直接聞かなかった。黄金ハンターは「エゲリアに選ばれた敬虔な孤児」ではなく、レムリアの遺民なのかもしれない。唯一の問題は、この推測では彼の不老不死を説明できないことだ…
遠回しに純水騎士のことを聞いてみた。彼の表情は見えないが、あまりこの話をしたくないようだ。意外だ。一般的な説によれば、最初に彼に付き従ったファントムハンターは純水騎士の子孫のはずだからだ。例えばエストとウォルターのように。まさか彼らも彼と同じように…
いずれにしても、彼の話によるよ、いま最も重要なことは(…)が封印からよみがえるのを阻止することだ。こういう歴史的な問題は、後で議論すればいい…
……
黄金ハンターのレムリアに対する理解は私の予想をはるかに超えていた。
史書の記録によると、ファントムハンターが最初に活動を始めたのは、レムリアが滅びてから数十年後、純水騎士の概念がフォンテーヌから完全に消滅した時だったはずだ。どれだけ脚色しようと、ファントムハンターやレムリア、純水騎士を一緒にすることはない──これらはもともと同じ時代の概念ではないからだ。五歳の子供でも間違えるはずがない…
ところが彼が論じている内容に黄金の劇団に関係するものはほとんどなく、「いつも」もっとも古いレムリアに関することばかりなのだ…
ひとつ推測があるが、彼に直接聞かなかった。黄金ハンターは「エゲリアに選ばれた敬虔な孤児」ではなく、レムリアの遺民なのかもしれない。唯一の問題は、この推測では彼の不老不死を説明できないことだ…
遠回しに純水騎士のことを聞いてみた。彼の表情は見えないが、あまりこの話をしたくないようだ。意外だ。一般的な説によれば、最初に彼に付き従ったファントムハンターは純水騎士の子孫のはずだからだ。例えばエストとウォルターのように。まさか彼らも彼と同じように…
いずれにしても、彼の話によるよ、いま最も重要なことは(…)が封印からよみがえるのを阻止することだ。こういう歴史的な問題は、後で議論すればいい…
……
ルッジェロのノート・2
残念ながら、(…)以外に、注目すべきレムリアの宝は見つからなかった。古代の保管庫でよく見られるものばかりだ。
黄金ハンターの話が本当なら、我々が当初追い求めていた(…)はとっくにカピトリウムとともに海底に沈んでいる。ここの文化財の多くは黄金の劇団のものであって…
いずれにせよ、今の我々には文化財を回収する余裕がない。ここを封鎖することが急務だ。文化財の位置は地図に記しておいた。もしかしたらいつの日か…
黄金ハンターの話が本当なら、我々が当初追い求めていた(…)はとっくにカピトリウムとともに海底に沈んでいる。ここの文化財の多くは黄金の劇団のものであって…
いずれにせよ、今の我々には文化財を回収する余裕がない。ここを封鎖することが急務だ。文化財の位置は地図に記しておいた。もしかしたらいつの日か…
ルッジェロのノート・3
……
何もかも完全に理解した。
人間は自分の能力の範囲を超えた知識を身につける必要は全くなく──そうするべきでもない。ある意味では、人が知識を求めているのではなく、知識が人を追いかけているのだ。
一つ考えがあるが、黄金ハンターが去るまで彼には言わなかった。荒廃して久しいペトリコール町を再建し、流浪の民を呼び寄せて定住させ、また違った伝説を広めてもいいだろう。そうすれば、新たに築かれた封印は彼らによって自発的に保護され、ここの秘密も永遠に…
……
何もかも完全に理解した。
人間は自分の能力の範囲を超えた知識を身につける必要は全くなく──そうするべきでもない。ある意味では、人が知識を求めているのではなく、知識が人を追いかけているのだ。
一つ考えがあるが、黄金ハンターが去るまで彼には言わなかった。荒廃して久しいペトリコール町を再建し、流浪の民を呼び寄せて定住させ、また違った伝説を広めてもいいだろう。そうすれば、新たに築かれた封印は彼らによって自発的に保護され、ここの秘密も永遠に…
……
北方の蛮族に対して、これまでずっと様々な誤解がある。こうした誤解は征服と鎮撫に不利であり、帝国の長期的な幸福にとっても不利である。
そのため、私こそ第六「楽詩」軍団副官・ヒルティウスが、ここに知るすべてを忠実に記録する──大調律師ユーレゲティアの誰もが知る慈悲と命令に従い、後世の後継者たちが北方鎮撫という使命を順調に果たせるように。
【社会】
酋族によって社会形態に極めて大きな差がある。ほとんどの酋族は依然として原始的な氏族社会であり、各氏族の長から構成される議事会が最高権力を握っている。しかし、一部の酋族はもはや「部族社会」とは呼べない。多くの人はこの点を認めたがらないが、彼らが原始的な未開社会からとうに脱しているという事実を直視せねばならない。
例えば、リヨンネンシスは第五軍団によって平定される前、人口は(…)を超え、北方の多くの酋族の貿易中枢として、(…)に匹敵するほど繁栄していた。この地域の統治者も自らを「酋長」とは呼ばず、「聖王」と名乗り、彼らの統治権力は「百泉の母」から授かった古い宝剣から来ていると考えていた。もちろん、理性的な市民なら誰でも分かるように、水の中に横たわる怪しげな女性が宝剣をくれたからといって権力を築く礎にはならない。権力の礎は音律の調和によるものであり、わけのわからない水中儀式ではない。
また例えば、(…)は占星術師で構成された議事会が統治している。彼らは(…)の方式を採用して、生まれつき元素の親和力を持っている子供たちを選び出し、養成して(…)としているが、こうした「人」は戦場で我々の軍団とほぼ正面から対抗できる。
(マリウス・セルヴィウス注:ここで言及されている都市国家は、大調律師ボエティウスに征服されて滅び、その名も記憶から消された。)
これまで、原始的な状態にある部族社会に対しては、各氏族の長老を片付けるだけで征服が完了した。数十年前、大調律師アウレリウスの北方遠征はこのように順調に進んだ。武力を行使する必要もなく、軍団の兵士を派遣して征服を宣告するだけで、孤島の狭い部族社会を帝国の版図に組み入れることができた。しかし、アルモリカの征服に伴い、こうした部族社会はどんどん減っている。各酋族を鎮撫するには、それぞれ違った手段を採用しなければならない。大調律師ユーレゲティアが言うように、彼らの本性は無知で粗野な蛮族であるから、こちらが先に彼らを理解しなければ、彼らはこちらを理解できない…
(この後の数ページは消されていて、読めない。)
【信仰】
現在、北方の蛮族は「万水の主」という偽りの神(もしくは邪神)を統一的に信仰していると一般に考えられている。しかし。これは実際にはアルモリカの征服がもたらした虚像である。その首領が他の酋族に迫って、彼らがもともと信仰していた神にも「万水の主」の側面があると認めさせたにすぎない。もともとどんな神を信仰していて、どんな名前を持っていたかに関わらず。
言い換えれば、北方の蛮族に統一された信仰はない。今日においても、「万水の主」という概念について彼らの間に統一的な理解はない。アルモリカの首領はこの点は気にしていないようで、同じ名前を尊び崇めることだけを求め、信仰の内容を規定したことはない。
いずれにしても、彼らの信仰は野蛮で血なまぐさい要素を備えている。一部の学者は、これは彼らが神から返事を得られたことがなく、ますます残虐で過激な祭祀を通じて、偽りの信仰を維持するしかないからだと考えている。
彼らに至尊の慈悲を示しても無意味である。慈悲は蛮族から弱さと見なされるからだ。正しいやり方は、至尊なら彼らの偽りの神を軽々と負かすことができ、至尊だけが尊ぶに値する強者であると、彼らに示してやることだ…
(この後の数ページは消されていて、読めない。)
【アルモリカ】
もともとは無名の小さな部族だったが、今や北方の権力の中心になっている。
前任の統治者はクノリクスといい、二十年前帝国の臣下に降ったことがある。現在の統治者──すなわち悪名高いエリニュスについては、あまり知られていない。捕虜になった従僕の話から、彼女はクノリクス王の子ではないことが分かった。王にはもともとカイウスという名の別の子がいたという。しかし彼女がいつ、どのような方法でアルモリカの統治者になったのかは不明である。
どれほど偽りの神の祝福を受けたと主張しても、彼女が凡人の常識の範囲を超える能力を見せたことはない。彼女がこれまでにしてきたことは、どれも狡猾な策略を用いた、帝国とその民に対して犯した卑劣な罪にすぎない。生きるか死ぬかの瀬戸際でなすすべのない人だけが、絶望のあまり、神のご意思が聞けると称する女性を信じて、彼女に付き従っているだけだ。大調律師ユーレゲティアが言うように、彼女は神などこれっぽっちも信じていない──信仰を持っている人が神の名を借りて残虐な行いをするはずがない。
(マリウス・セルヴィウス注:「エリニュス」という名前は最初に転写したときに誤りがあったようだ。この名前は彼らの言語では意味をなさないからだ。昔日の人の表記記号の中で、「グ」は「ニュ」に近く、これまでも誤記の前例がある。この名前の正確な読み方は「アルモリカのエルグウィンド」のはずである。昔日の人の言語で、「エ」は「高い」を意味し、「ルグウィンド」は「王」の格変化である。
この角度から考えると、これは彼女の本名ではなく肩書きかもしれない。しかし、すでに多くの学者が「エリニュス」と呼んでいることを考慮し、むやみに変更する必要もないだろう。)
そのため、私こそ第六「楽詩」軍団副官・ヒルティウスが、ここに知るすべてを忠実に記録する──大調律師ユーレゲティアの誰もが知る慈悲と命令に従い、後世の後継者たちが北方鎮撫という使命を順調に果たせるように。
【社会】
酋族によって社会形態に極めて大きな差がある。ほとんどの酋族は依然として原始的な氏族社会であり、各氏族の長から構成される議事会が最高権力を握っている。しかし、一部の酋族はもはや「部族社会」とは呼べない。多くの人はこの点を認めたがらないが、彼らが原始的な未開社会からとうに脱しているという事実を直視せねばならない。
例えば、リヨンネンシスは第五軍団によって平定される前、人口は(…)を超え、北方の多くの酋族の貿易中枢として、(…)に匹敵するほど繁栄していた。この地域の統治者も自らを「酋長」とは呼ばず、「聖王」と名乗り、彼らの統治権力は「百泉の母」から授かった古い宝剣から来ていると考えていた。もちろん、理性的な市民なら誰でも分かるように、水の中に横たわる怪しげな女性が宝剣をくれたからといって権力を築く礎にはならない。権力の礎は音律の調和によるものであり、わけのわからない水中儀式ではない。
また例えば、(…)は占星術師で構成された議事会が統治している。彼らは(…)の方式を採用して、生まれつき元素の親和力を持っている子供たちを選び出し、養成して(…)としているが、こうした「人」は戦場で我々の軍団とほぼ正面から対抗できる。
(マリウス・セルヴィウス注:ここで言及されている都市国家は、大調律師ボエティウスに征服されて滅び、その名も記憶から消された。)
これまで、原始的な状態にある部族社会に対しては、各氏族の長老を片付けるだけで征服が完了した。数十年前、大調律師アウレリウスの北方遠征はこのように順調に進んだ。武力を行使する必要もなく、軍団の兵士を派遣して征服を宣告するだけで、孤島の狭い部族社会を帝国の版図に組み入れることができた。しかし、アルモリカの征服に伴い、こうした部族社会はどんどん減っている。各酋族を鎮撫するには、それぞれ違った手段を採用しなければならない。大調律師ユーレゲティアが言うように、彼らの本性は無知で粗野な蛮族であるから、こちらが先に彼らを理解しなければ、彼らはこちらを理解できない…
(この後の数ページは消されていて、読めない。)
【信仰】
現在、北方の蛮族は「万水の主」という偽りの神(もしくは邪神)を統一的に信仰していると一般に考えられている。しかし。これは実際にはアルモリカの征服がもたらした虚像である。その首領が他の酋族に迫って、彼らがもともと信仰していた神にも「万水の主」の側面があると認めさせたにすぎない。もともとどんな神を信仰していて、どんな名前を持っていたかに関わらず。
言い換えれば、北方の蛮族に統一された信仰はない。今日においても、「万水の主」という概念について彼らの間に統一的な理解はない。アルモリカの首領はこの点は気にしていないようで、同じ名前を尊び崇めることだけを求め、信仰の内容を規定したことはない。
いずれにしても、彼らの信仰は野蛮で血なまぐさい要素を備えている。一部の学者は、これは彼らが神から返事を得られたことがなく、ますます残虐で過激な祭祀を通じて、偽りの信仰を維持するしかないからだと考えている。
彼らに至尊の慈悲を示しても無意味である。慈悲は蛮族から弱さと見なされるからだ。正しいやり方は、至尊なら彼らの偽りの神を軽々と負かすことができ、至尊だけが尊ぶに値する強者であると、彼らに示してやることだ…
(この後の数ページは消されていて、読めない。)
【アルモリカ】
もともとは無名の小さな部族だったが、今や北方の権力の中心になっている。
前任の統治者はクノリクスといい、二十年前帝国の臣下に降ったことがある。現在の統治者──すなわち悪名高いエリニュスについては、あまり知られていない。捕虜になった従僕の話から、彼女はクノリクス王の子ではないことが分かった。王にはもともとカイウスという名の別の子がいたという。しかし彼女がいつ、どのような方法でアルモリカの統治者になったのかは不明である。
どれほど偽りの神の祝福を受けたと主張しても、彼女が凡人の常識の範囲を超える能力を見せたことはない。彼女がこれまでにしてきたことは、どれも狡猾な策略を用いた、帝国とその民に対して犯した卑劣な罪にすぎない。生きるか死ぬかの瀬戸際でなすすべのない人だけが、絶望のあまり、神のご意思が聞けると称する女性を信じて、彼女に付き従っているだけだ。大調律師ユーレゲティアが言うように、彼女は神などこれっぽっちも信じていない──信仰を持っている人が神の名を借りて残虐な行いをするはずがない。
(マリウス・セルヴィウス注:「エリニュス」という名前は最初に転写したときに誤りがあったようだ。この名前は彼らの言語では意味をなさないからだ。昔日の人の表記記号の中で、「グ」は「ニュ」に近く、これまでも誤記の前例がある。この名前の正確な読み方は「アルモリカのエルグウィンド」のはずである。昔日の人の言語で、「エ」は「高い」を意味し、「ルグウィンド」は「王」の格変化である。
この角度から考えると、これは彼女の本名ではなく肩書きかもしれない。しかし、すでに多くの学者が「エリニュス」と呼んでいることを考慮し、むやみに変更する必要もないだろう。)
古き碑文
汝はリヨンネンシスの栄華を望み、なんとその都市国家を廃墟にして、それに枷と鎖を作った。
ファウヌスよ、許婚を殺されて汝に奪われ、虜の身となった蛮族の少女が、
汝の身に高価な香油を塗り、汝の杯にビトリア産の美酒を注いできた少年が、
逃れられぬ死が汝の足下に迫った以上、いつまでも汝と共に老いさばらえていようか?
ファウヌスよ、許婚を殺されて汝に奪われ、虜の身となった蛮族の少女が、
汝の身に高価な香油を塗り、汝の杯にビトリア産の美酒を注いできた少年が、
逃れられぬ死が汝の足下に迫った以上、いつまでも汝と共に老いさばらえていようか?
古き碑文
「…大調律師ボエティウスの命により、最も尊ぶべき、聖なる至善の音律に従って、本日よりヤヌスの門を閉鎖する。何人も自由に出入りするべからず…」
「…帝国のために、神王のために、人類の文明のために…」
「…帝国のために、神王のために、人類の文明のために…」
古き碑文
「…大調律師ユーレゲティアの命により、最も尊ぶべき、聖なる至善の音律に従って、第六『楽詩』軍団は本日より大調律師ボエティウスの後につき、パレス・カエサレウムを守る…」
「…第六軍団の蛮族を鎮める伝統に則り、来訪した龍の裔を迎える時、敵意を見せてはならない…」
(この後の数行は故意に消されているようで読めない。)
「…第六軍団の蛮族を鎮める伝統に則り、来訪した龍の裔を迎える時、敵意を見せてはならない…」
(この後の数行は故意に消されているようで読めない。)
古き碑文
「…大調律師ボエティウスの命により、龍の裔の特使を迎え、協力に関する相談を行う…」
(この後の数行は鋭利な何かで乱暴に消されたようで、読めなくなっている。)
「裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。」
「我らと共に、永生の牢獄へと落ちるがいい、異種族よ。」
(この後の数行は鋭利な何かで乱暴に消されたようで、読めなくなっている。)
「裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。裏切り者。」
「我らと共に、永生の牢獄へと落ちるがいい、異種族よ。」
古き碑文
「…大調律師ボエティウスの命により、ポルタス・アンティクスとヤヌスの門を予定通り封鎖する…」
「…七重もの防衛線を敷き、あらゆる退路を封鎖する…龍の裔が到着した暁には、……(読めなくなっている)をもって帝国の敵をすべて滅ぼす…」
「…大調律師ユーレゲティアが血と……(読めなくなっている)の骨で鍛えた三つの枷…パレス・カエサレウムに運ばれた…もしも魔龍の首領を倒せなければ、永遠にここに封じ込めん…」
「…帝国のために、……(名前が故意に消されている)のために、人類の文明のために…」
「…七重もの防衛線を敷き、あらゆる退路を封鎖する…龍の裔が到着した暁には、……(読めなくなっている)をもって帝国の敵をすべて滅ぼす…」
「…大調律師ユーレゲティアが血と……(読めなくなっている)の骨で鍛えた三つの枷…パレス・カエサレウムに運ばれた…もしも魔龍の首領を倒せなければ、永遠にここに封じ込めん…」
「…帝国のために、……(名前が故意に消されている)のために、人類の文明のために…」
古き碑文
願わくばあなたの音律が安らかならんことを。善良なユーレゲティア、わが同僚、わが親友、わが姉妹よ。
たとえあなたの慈悲が忘れ去られても、あなたの名前が忘れ去られても、ここの花々はあなたのために咲くでしょう。
お眠りなさい、もう過去のことで悩む必要も、未来のために涙を流す必要もありません。これまで通り笑ってください。
──ウラノポリスのウラニデス
たとえあなたの慈悲が忘れ去られても、あなたの名前が忘れ去られても、ここの花々はあなたのために咲くでしょう。
お眠りなさい、もう過去のことで悩む必要も、未来のために涙を流す必要もありません。これまで通り笑ってください。
──ウラノポリスのウラニデス
古き碑文
「…第五軍団特使ファウヌスの命令に従って北の港の防衛線を撤去し、パレス・カエサレウムに防衛線を敷くべし…」
「側翼の防衛は既に第九軍団に任せた。あとは正面突破されないようにするだけ………(読めなくなっている)すでに各百人隊に配属した…狡猾な蛮族とは異なり、龍の裔は策略などしない。ただ…」
「側翼の防衛は既に第九軍団に任せた。あとは正面突破されないようにするだけ………(読めなくなっている)すでに各百人隊に配属した…狡猾な蛮族とは異なり、龍の裔は策略などしない。ただ…」
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